強いプロゴルファーには、優れたキャディがついている。
1998年のつるやオープン。藤田寛之プロとコンビを組んだ、梅原敦キャディは、以後15年間右腕として専属キャディを務め、藤田寛之プロとのコンビで14勝をあげた。賞金王、海外メジャーなどでも常に横にいた。
2014年からフリーとして独立。以後は森田理香子プロ、成田美寿々プロ、李知姫プロ、鈴木愛プロなどとコンビを組み、2015年、2016年と、成田美寿々プロと塚田陽亮プロとのコンビで優勝。2017年、李知姫(イ・チヒ)プロを担いでの優勝で、通算22勝をマークした。
今シーズンも、今平周平プロを担いで、「アジアパシフィックオープンチャンピオンシップ ダイヤモンドカップゴルフ」や「ZOZOチャンピオンシップ」などで活躍する、名キャディ、梅原敦さんのロングインタビューをお届けしていく。
「距離感の養い方」や、「ライの判断」「スコアを崩さない人の共通点」でのアマチュアゴルファーへのアドバイスは、ゴルファー必見だ。
目次
21年のキャディ人生、最も印象的なのは、成功よりも失敗。
――これまで21年という長きの間、賞金王の藤田プロをはじめ、多くのプロを担いでいらっしゃいますが、一番印象的な場面は、どのような場面だったのでしょうか?
一番、印象に残っているのは、大事なシーンでのミスジャッジですね。
多分、これは一生覚えています。
キャディにとって致命的なミスとして、例えば、グリーン上でのライン読みというのは中々間違えないんですが、クラブ選択を間違えて、グリーンをオーバーさせてしまった失敗がありました。
具体的には、2年前のニチレイレディスで、新海美優さんを担がせてもらっていたときのこと。
トップとは打数があって、単独2位だったんですけど、最終日、17番のショートホールで、クラブ選択を間違えて、オーバーしてしまったせいで崖下までボールが落ちてしまったんです。
(本人はフライヤーとアドレナリンがでていて、飛びすぎたと言っていましたが。)
100%僕の責任でした。
というのも、それまで彼女は僕のことを完全に信じてくれていたんです。
プロとの関係性によっては、クラブが大きいでしょみたいな風に言ってくれて話合いになったりするんですが、彼女は信じてくれていたのでそのまま打ってオーバー。
僕のミスによって、単独2位をキープできたのに、タイで終わってしまったこと。
これは、一生忘れられないですね。
――ラウンド中、プロとのコミュニケーションは積極的に取っていらっしゃるんですか?
藤田さんとか、長かったプロのときは、僕の意見も言いますけど、僕が間違っていると思ったら、「こっちのクラブで行くよ」とプロも言ってくれるので。
大きなミスというのは、深海さんくらいだったかもしれませんね。
もちろん、相談してくれることもあって、面白いやりとりで言ったら、女子の若い子で、自分で選んだクラブや、どんなショットを打つかがわかっていないときがあります。
例えば、私の選択ミスの話を最初にしていて難ですが、とんでもなくでかいクラブを握っていて、それだとギャラリーの中段まで飛んでいくぞ。なんて時があるんです。
そういう時は、「もう少し、ゆっくり考えなさい。」など伝えたりしますね。
首位で、最終ホールに上がっていくときの思いは格別。
――では逆に、今までで一番嬉しかった場面で印象に残っているシーンはどのような場面なのでしょうか?
首位が決まっていて、最終ホールのグリーンに上がっていくときのことですね。最高の瞬間です。
大拍手に迎えられて、グリーンに上がっていく。
1打差くらいの首位だったら違いますが、パーで上がれば十分優勝できる差がついていれば、格別の気持ちです。
――計22回の優勝の中で、特に印象に残っている優勝はありますか?
印象に残っているのは、2015年に、成田美寿々選手を担いで、サントリーレディスで優勝したとき。
なぜ、そこまで印象的なのかイマイチ覚えていないんですが、印象に残っています。
その年、成田選手を、担ぐことが多かったんですが、サントリーレディスでは、初日からスコアが飛び出していたんですよね。
成田選手は過去のツアーでも、優勝争いはするんですが、争った結果、スコアが後半凹んでしまうことが多かったんです。
で、ラウンドの時に、「ナリタブライアン」の走りを見ろ!って励ましたんです(笑)
成田選手は、なんでも合わせてくれる方なんで、16番のティに来た時に、その流れで、話そうと思って、「最後の直線だ!と言ってそのまま突き抜けろ!」と言ったら、「わかりました!」って返してくれました。
最後のショートホールで、バーディがとれて突き放せて、最終パーで優勝できたんです。
成田選手とは、とてもお互い言い合える関係で、相手も言ってくれるし、こっちも言えるし、良い優勝が取れて良かったですね。
「狭いから刻む、って言ったら怒られた。」
――他にも、例えば、「狭いホールでドライバーを握らないほうが良い。」など提案することがある?
私は、狭いホールでドライバーというのは、なしではないと思っています。
今シーズン担いでいる、今平選手でも。
ドライバーを持っていくときもあるし、それは、あり。
藤田選手には、昔怒られたことがあって「狭いから刻むという選択肢はない。」と本人は言っていました。
ドライバーをまっすぐ飛ばせる自信があると思うんです。
だからこそ、狭いときも、ドライバーを握る。
他の選手にアドバンテージを取れますよね。
ただ、ドライバーを使って突き抜けてしまうときとかは、もちろん、他のクラブを検討しますね。
今平周吾は、すべてのクラブでズバ抜けている。
――今シーズン担いでいる、梅原キャディからみて、今平選手はどんな方?
「物静かな方、誰に対しても。」
冷静沈着で慌てない、他に冷静なのは、藤田選手、鈴木愛選手。
正直、今平選手は冗談抜きで、すべてのクラブが人よりずば抜けているように感じます。
十分世界で通用するレベルだと思って担いでいます。
鈴木愛は絶対に震えないメンタルの持ち主。
――今平選手の他にも藤田選手や鈴木選手の名前が出ましたが、特にメンタルが強いと感じたプロはいますか?
やっぱり鈴木愛選手かな。
担がせてもらった中で、本当にメンタルが強いと思いました。
試合だからどうこうというのはなくてメンタルが強い。
例えば、僕がキャディやったとき、練習ラウンドと、試合で、僕と話すリズム、内容が全く変わらないんです。家の中で話しているような。
特に優勝がかかってきたりすると、ゾーンに入る人、とかは口数が必要最低限になったりしますね。ですが、愛ちゃんは全く変わらない。
緊迫した場面でも、わざと普通の話をしたり、こんなに余裕あるぞってアピールする人もいるんですけど、鈴木愛選手は、いつも通りって感じ。
僕が緊張しちゃうような場面でも、いつも通りでしたから。
私が担いでいた当時は、勝ち始める結構前だったけれど、その頃から風格がありました。
――やっぱりプロゴルファーでも、ツアーでは、緊張するものですか?
もちろんしますね。
例えば、ティアップのとき震えたりしますよ。
藤田選手も優勝がかかったとき、最終日のスタートホールで、緊張していましたね。
でも、鈴木愛は絶対に震えないと思います。
アプローチ・パターが上手い人は、調子が悪くても崩れない。
――長いシーズン、メンタルの強さ以外にも、調子の良し悪しや、スコアが崩れる人・崩れないの決め手はあるのでしょうか?
スコアが崩れる人・崩れない人には、共通点があって、ショット力が高い、アプローチ・パターが上手い人は、調子悪いときでも、崩れない。
今平選手は総合的にいいけど、藤田選手は、ショートゲームはすごい。
イ・チヒはショット力がすごい。
だから、大崩れしない。
名前を出せないけれど、ドライバーだけ上手みたいな選手は、調子が悪くなると予選落ちしてしまいますね。
アマチュアの場合でもやっぱり、アプローチ、パターが人より上手ければ中々崩れない。
アプローチとパターだけ練習しろって、ゴルフ雑誌や、教科書には乗っているですが、誰もやらないですよね。
アプローチとパターをずっとやっている人はいないので、それだけやれば、人と差がついてくると思いますよ。
(僕もしていないけどね(笑))
距離や風の読みは、事前準備で決まる。
――正確なショットには、距離の読みも重要になると思うのですが、プロのキャディはどのような読み方をしているのでしょうか?
例えば、アマチュアの人はずっとコースでできるわけではないから、このクラブで、この振り幅なら何ヤードって作った方が良いですね。
これくらいの振り幅なら、これくらい打てるという感覚。
例えば、目視で、あと何ヤードかわかる感覚とか、なんとなーく決まったヤード打つというのは、中々難しいと思います。
今は、GPSとかレーザーもありますしそういったもので測りながら、測った距離を打てるようになる。
100y以内なら10y刻みで打てるようになる、その形をつくったほうが良いですね。
――ツアー中は、どのような測り方をしているのでしょうか?
スプリンクラーだったりの細かい目標物の位置は練習ラウンドで確認しています。
そして、ヤーデージブックにメモしておくんです。
もともと、ヤーデージブックは、1yの誤差もないくらい正確なので、ヤーテージブックを確認してラウンドします。
――なるほど。風はどのように読んでいらっしゃるのでしょうか?
正直、雰囲気です。
風が何メートルだったら、1クラブ、2クラブ上げるとか言えないので残念なのですが、短い番手でも抑えめで打てばいくときもあるし。
風の強さによって何番手というセオリーはないです。
一つ言えるのは、天気予報はみんなしっかり確認しているということ。
今日は何メートル吹く、風向き、何時から変わるなということは確認しています。
なんとなくいつも通りに打つのはNG。打つイメージを持ってライの判断を。
――ライの判断は、どのようにされているのでしょうか?
女子のが多いけれど、若い選手は、これはフライヤーするな。とか、ラフはこのクラブ出るか分からない選手がいたりするのでアドバイスします。
男子の方がご自身で判断する人が多かったように思います。
アマチュアの方に言えるのは、ライの判断はもっとしっかりしてほしいですね。
なんとなくいつもどおり打っている人が多いんです。
グリーン周りの逆目だったら、もっとクラブを開いて強めに入れるとか。
状況判断のコツとしては判断基準は、
- まっ平かどうか
- 傾斜度合い
- ボールが沈んでいないか・浮きすぎていないか
- 芝の向き
などです。
セカンドショットだったら、ロフトがあるクラブを使って安全に打つ。
傾斜がきついところは、こういうときは、こう打とう。などイメージを持つことが大切です。
コースでは真っ平らなライなんて、中々ないので難しいかもしれません。
つま先下がりだったらこう打とう、とかイメージを養っておくと良いですね。
1974年4月5日生まれ。京都府向日市出身。
1998年の「つるやオープン」より藤田寛之プロとコンビを組み、以後15年間右腕として専属キャディーを務める。
藤田寛之プロとのコンビでは14勝をあげ、賞金王、海外メジャーなどでも常に横にいた。
2014年からフリーになり、以後は森田理香子プロ、成田美寿々プロ、李知姫プロ、鈴木愛プロなどとコンビを組み、2015年サントリーレディスオープンでは成田美寿々プロとのコンビで優勝。
2016年では「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」にて、塚田 陽亮プロとコンビを組み優勝。
2017年では、日本女子プロゴルフ選手権で李知姫(イ・チヒ)選手のキャディとして優勝をあげた。 通算22勝。
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