2019年、ゴルフルール大改正!知っておくべき29の新ルールを徹底解説

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2019年1月1日から、ついに新たなゴルフ規則が施行されました。今回の大改正は2年前からアナウンスされていたこともあり、新ルールがどのようなものになるのかと関心をお寄せになっていた方も多いのではないでしょうか。

今回の改正では、より多くのゴルファーにとってわかりやすくし、そしてプレーファストを促進することを主な目的としています。これに伴って多くのルールが改正され、新たなゴルフ用語も誕生しました。まさに「改革」ともいわれるレベルです。

この記事では今回改正された新しいポイントを29個に分けて徹底解説します。これを読んで新しくなったルールを頭に入れ、スムーズにプレーできるようにしていきましょう。

目次

1. 2019年、ゴルフ規則は大幅改正!

2. ゴルフコース内の【エリア名称】が変更

3. 【スピードプレー】に資する3つのルール
3.1. 「レディーゴルフ」の奨励、ストロークは《40秒》以内で
3.2. ボールの捜索時間は《5分》から《3分》に
3.3. 「最大スコア」までのプレーを推奨

4. 【ペナルティーエリア・バンカー】で注意したい4つの変更点
4.1. ルースインペディメントを動かせるように、さらにPA内ならソールもOK
4.2. バンカー内では「条件付きで」砂に触れても罰打なし
4.3. 2打罰でバンカーの《外》にドロップ可能に
4.4. PAでは原則ラテラルと同様の救済を受けられるように

5. 【救済】にまつわる要注意の6つの変更点
5.1. 「救済エリア」を決めるときにはパター以外の《最も長いクラブ》
5.2. ドロップは《膝の高さ》から
5.3. ボールは救済エリアに止まるようにドロップ
5.4. 捜索中に誤ってボールを動かした場合には、場所を特定して《無罰でリプレース》
5.5. 救済時にはいつでもボールを交換可能に
5.6. ジェネラルエリアでは無罰でピッチマークからの救済を受けられる

6. 【グリーン】で注意したい4つの新ルール
6.1. 旗竿(ピン)を挿したままパット可能に
6.2. グリーン面の損傷のほとんどを修復可能に
6.3. パットの線に触れてもOK
6.4. ボールを誤って動かしても無罰でリプレース

7. 【プレーヤーの行動】に関する4つの変更点
7.1. プレーヤーの誠実さに頼るルールへ
7.2. ボールを拾い上げる際の告知が不要に
7.3. ビデオ映像よりもプレーヤーの「合理的判断」が支持されるように
7.4. 「事実上確実」でない限り、プレーヤーがボールを動かしたとは認められない

8. 頭に入れておくべきその他7つの変更点
8.1. 二度打ちをしても無罰に
8.2. ボールがプレーヤーや用具などに当たっても無罰で「あるがまま」に
8.3. 距離測定器が使用可能に
8.4. クラブを損傷してもそのまま継続して使用可能に
8.5. スタンス後にキャディーを後方に立たせることを禁止
8.6. グリーン上でキャディーがボールを拾い上げる場合、プレーヤーの承認が不要に
8.7. ローカルルールで「前進2打罰」を適用可能に

9. 「ゴルフ規則書」は2種類に

10. まとめ

1. 2019年、ゴルフ規則は大幅改正!

2019年1月1日から、大幅に内容が変更された新たなゴルフ規則が施行されました。2017年3月にR&AとUSGAが規則を大幅に見直すことを発表したあと、世界中のゴルファーからのフィードバックを受け修正をおこなったのち、2018年の3月に新規則がリリースされて現在に至ります。

2019 Rollout |USGA

今回の改正では、主にスピードプレーを促進し、多くのゴルファーにとって理解しやすいようにルール変更がなされました。以前よりもゴルファーにやさしく簡単な規則となったことで、新規ゴルファーの創出が期待されています。

規則が簡単になったといっても、規則は全265ページにもわたり、そのすべてを2018年までの規則と比較することは難しいですよね。

そこでこの記事では規則の変更点を29の項目に分け、丁寧にわかりやすく解説していきます。それでは第2章以降で確認していきましょう。

2. ゴルフコース内の【エリア名称】が変更

まずはじめに、ルールがどこまで適用されるのかを把握するのに欠かせないコースエリアを確認しておきましょう。これまでは「スルーザグリーン」や「ハザード」などのように呼ばれていましたが、これらの呼称がなくなり以下のようになりました。

  • ティーイングエリア:旧ティーインググラウンドのこと。プレーヤーがホールをスタートするときに使用。
  • ペナルティーエリア:旧ウォーターハザードのこと。水域に限らず、委員会は木が密集したエリアやジャングル、砂漠などをペナルティエリアとして定められる。
  • ジェネラルエリア:旧スルーザグリーン。上の2つのエリアとバンカーおよびパッティンググリーンを除いた、コース内のすべてのエリアのこと。コース上の大半を占めるため、”general”と呼ばれる。

以上の3つのコースエリアにバンカーとパッティンググリーンの2つのコースエリアを加えて、コースが成り立ちます。

これらのエリアの名前は規則が適用される範囲を表すために頻繁に使われますので、まずはそれぞれが指し示す区域をしっかりと頭に入れておきましょう。

関係条項:規則2.2

3. 【スピードプレー】に資する3つのルール

第3章でご説明するのは、スピードプレーを促進する新たな3つのルールです。今回のルール改正では、特にこの項目が重視されました。

PLAY FAST! |アコーディア・ゴルフ

スピードプレーとは、その名の通りスピーディーにプレーすることです。ゴルフではスロープレーは重大なマナー違反とされておりゴルフ規則上でも罰則が設けられていますが、それでもなおゴルフ界で問題とされています。

そこで新ルールでは、スピードプレーについて直接的に言及する(規則5.6b)とともに、スピードプレーを促進するために3つのルールが変更されました。以下ではそれぞれについてご説明していきます。

3.1. 「レディーゴルフ」の奨励、ストロークは《40秒》以内で

これまでは「遠球先打」が原則でした。遠球先打とは、カップから最も遠くにボールがある人から打ち進めていくというルールです。

しかし、このルールにこだわりすぎることでスロープレーが助長されてしまうことも度々でした。そこで新たに、「レディーゴルフ」が奨励されるようになりました。

レディーゴルフとは、厳密な順番はなく、準備ができた人からショットをしていくというルールです。準備ができた順に打っていけるため、プレー時間の短縮が期待されます。

動画でチェックしよう

なお、規則では他のプレーヤーを危険にさらしたりすることがない場合や、すでに他のゴルファーに同意を得られている場合などの条件が示されています。また、「通常のプレーの順番」として遠球先打の原則が示されていますので、もし全員の準備が整っていて問題がなければこの原則に従ったほうがよいでしょう。

また、準備ができてから40秒以内にストロークをすることも推奨されるようになりました。あくまでも40秒以内であり、通常はこれよりもさらに速くプレーすることが求められています。

関係条項:規則5.6b、規則6.4b

3.2. ボールの捜索時間は《5分》から《3分》に

これまでは、ボールを探し出してから5分経っても発見できない場合にはボールを「紛失」したとみなされていました。

しかし、今回の改正からは捜索時間は5分から《3分》へと短縮されました。3分以内に発見できない場合には、そのボールは紛失球となり、インプレーの球ではなくなります。これにより、スピードプレーが促進されることになるでしょう。

また、捜索時間が3分という短時間に制限されたことで、各プレーヤーが自分のボールが紛失球となってしまう可能性を考え、今以上に暫定球を打つようになることも期待されています。

関係条項:規則18.2a

3.3. 「最大スコア」までのプレーを推奨

新たに「最大スコア」という概念が生まれました。これは各ホールでの最大スコア(打数)をあらかじめ委員会が決定しておけば、その打数までに制限されるという形式です。

たとえばパー4のコースで、ダブルパーである “8”を最大スコアとして設定すれば、カップインしていなかったとしても最大スコアである8打でそのホールを終えることができます。また、仮に最大スコアを超えてプレーしカップインしても、そのホールのスコアは設定された最大スコアです。

このように最大スコアを定めることで、それ以上のプレーを抑制し、スピードプレーを促進させることが目的です。また、初心者プレーヤーのプレッシャーの緩和や、必要以上にプレーヤーを落胆させないようにすることも期待されています。

関係条項:規則21.2

4. 【ペナルティーエリア・バンカー】で注意したい4つの変更点

第2章では、新たなエリアであるペナルティーエリア(以下、PA)とバンカーにまつわる新たな4つのルールについてご説明します。

PA・バンカーでの処置などが以前よりもゴルファーにとってやさしくなったので、覚えておいて損はありません。むしろこれを知らなければ損をすることになるでしょう。

なお、救済方法の変更点などについては第3章「【救済】を受けるときに要注意の7つの変更点」でご説明します。

4.1. ルースインペディメントを動かせるように、さらにPA内ならソールもOK

これまで、ハザードとバンカー内にあるルースインペディメント(分離した自然物;葉や枝、石、昆虫など)は取り除くことができませんでした。しかし新ルールでは、PAとバンカーのいずれにおいても取り除けるようになりました。

動画でチェックしよう

ペナルティエリアとジェネラルエリアは基本的に同じ規則でプレーできるようになりました。そのため、ルースインペディメントは自由に取り除けますし、クラブをソールしたり(地面につけたり)、手で触れることもできます。もちろん水面にもつけられます。

また、バンカーからプレーすること、挑戦することの目的は「砂から脱出すること」であり、ルースインペディメントとともにプレーすることではないという判断から、バンカー内でもルースインペディメントを動かせるようになりました。

なお、ルースインペディメントを動かしたときにボールが動いてしまったら1打罰となりますので、注意するようにしましょう。

関係条項:規則12.2、規則15.1、規則17.1b

4.2. バンカー内では「条件付きで」砂に触れても罰打なし

PA内ではどのような場合でもソールが認められるようになった一方、バンカー内では一部の条件を除いてであれば砂に触れても罰打が課せられなくなりました。以下の4つが、バンカー内で砂に触れた場合に罰を受ける条件です。

  • 砂の状態をテストするために手やクラブ、レーキなどで故意に触れる
  • ボールの直前・直後の区域にクラブで触れる(ただし捜索の際や、ルースインペディメント、動かせる障害物を取り除く場合は除く)
  • 練習スイングのときにクラブで触れる
  • ストロークの際、バックスイングのときにクラブが触れる

このような場合に砂に触れると2打罰となります。つまり、従来と同様にストローク時のソールは禁止されているということです。

動画でチェックしよう

逆にこれ以外の場合には、どのような場合でも砂に触れて問題はありません。ゴルフ規則では、以下のような場合を罰を受けない例として挙げています。

  • スタンスをとるために足を潜り込ませること
  • クラブ、用具、その他の物をバンカーに置く、投げること
  • 休むため、バランスを保つため、転ぶのを防ぐためにクラブに寄りかかること
  • イライラして砂を叩くこと

関係条項:規則12.2b

4.3. 2打罰でバンカーの《外》にドロップ可能に

これまで、バンカー内にあるボールの救済処置には3つのやり方がありました。

①ストロークと距離の救済:元の位置からの打ち直し
②後方線上の救済:ボールとホールとを結んだ後方線上に1点を定め、そこから1クラブレングス以内にドロップ(ただしバンカー内)
③ラテラル救済:ボールから2クラブレングス以内のホールに近づかない箇所にドロップ(ただしバンカー内)

この3つの救済の選択肢は新ルールでも継続されており、それぞれ1打罰で救済を受けることができます。ただしこれらは、元の位置から打ち直すというスロープレーにもなりかねない方法か、場合によっては実質的には「救済」になりえないバンカー内にドロップするという方法です。

そこで新ルールでは、新たな救済方法が追加されました。それは④《2打罰》でバンカーの《外側》において後方線上の救済を受けるという方法です。②のバンカー内という条件をなくした方法です。

動画でチェックしよう

したがって②、③の方法でバンカーから脱出できるのであれば、これらの救済のほうが罰打を含めた打数を少なくできますが、バンカーに高い壁があるなど脱出が困難な場合には④の救済を受けるのがよいでしょう。

この新たな救済方法により、ゴルファー、特に初心者の方にとってはゴルフがやさしくなるほか、バンカーから出るまでに何打も打数を重ねなくても済むようになるので、プレーファストの促進にも繋がることでしょう。

関係条項:規則19.3b

4.4. PAでは原則ラテラルと同様の救済を受けられるように

PAでは原則、従来のラテラルウォーターハザードでの救済と同様の救済を受けられるようになります。従来、ゴルフ場内の水域は「ウォーターハザード」と「ラテラルウォーターハザード」に分けられ、それぞれで救済方法が違っていました。

新ルールでは赤杭・赤線で示される「レッドPA」と黄杭・黄線で示される「イエローPA」に分けられますが、原則としてレッドPAが用いられます。レッドPAでの救済方法は以下の3つです。

①ストロークと距離の救済:元の位置からの打ち直し
②後方線上の救済:PAの縁を最後に横切ったと推定される地点とホールとを結んだ後方線上の1点を定め、そこから1クラブレングス以内にドロップ
③ラテラル救済:PAの縁を最後に横切ったと推定される地点から2クラブレングス以内のホールに近づかないエリアにドロップ

動画でチェックしよう(②後方線上の救済)

動画でチェックしよう(③ラテラル救済)

レッドPAでは、この3つの中から最適な救済方法を選択します。一方、イエローPAでは③ラテラル救済は使えず、①ストロークと距離の救済か②後方線上の救済の2つしか選択できません。

メインとなるレッドPAでは従来のラテラルウォーターハザードと同様の救済を受けられます。しかし、これまでのいわゆる「対岸での救済」は廃止されたので注意するようにしましょう。

関係条項:規則17.1d

5. 【救済】にまつわる要注意の6つの変更点

第5章では救済方法に関する6つの変更点についてご説明します。

救済の方法を誤るとさらにペナルティを受けることになってしまいます。新たな正しい救済方法についての理解を深めておきましょう。

5.1. 「救済エリア」を決めるときにはパター以外の《最も長いクラブ》

まず、新たなゴルフ用語を確認しておきましょう。「救済エリア(relief area)」とは救済を受ける際にボールをドロップできる範囲のことをいいます。救済エリアは状況に応じて、基点、大きさ、場所の制限の3つの要素から決まります。

従来、このようなエリアの大きさを決定するための基準となる「クラブレングス」には、どのクラブを使っても問題ありませんでした。しかし新ルールでは、ラウンド中にプレーヤーが持っているクラブの中で、パター以外の最も長いクラブを使用するよう決められました。

したがって、これまでのように長尺パターなどで計測することはできません。多くの場合、ドライバーで計測するようになるでしょう。

関係条項:規則―定義

5.2. ドロップは《膝の高さ》から

救済エリアにボールをドロップするときには、膝の高さから真下に落とすようにしましょう。

動画でチェックしよう

従来は直立した状態で、肩の高さからドロップするよう決められていました。一方、新ルールでは立った姿勢での膝の高さからのドロップに変更されました。これは救済エリアに止まりやすいようにすることが主な目的です。

なお、「立った姿勢での膝の高さ」ではありますが、ドロップする際には必ずしも立った姿勢である必要はありません。そのため、膝を直角にするようにして立膝をし、そのときの膝の高さからドロップをしても問題ありません。

関係条項:規則14.3b

5.3. ボールは救済エリア内に止まるようにドロップ

ボールをドロップしたとき、そのボールは救済エリア内に止まらなければなりません。

従来のルールではボールが1または2クラブレングス以内に落ち、さらに落下地点から2クラブレングス以内に止まれば基本的には問題ありませんでした。しかし、新ルールでは救済エリア内にボールが落ちて、さらにエリア内にしっかりとボールが止まらなければならなくなりました。

もしボールが転がり出た場合には、再ドロップを1回だけできます。それでもボールが止まらない場合には、再ドロップをしたときにボールが落ちた箇所にプレースします。なおボールが止まらない場合には再度プレースをし、そこでも止まらないときにはボールが止まる最も近い箇所にボールをプレースします。

動画でチェックしよう

一方、ドロップしたときに救済エリア外にボールが落下した場合や正しくない高さからドロップした場合には再度ドロップが必要になりますが、間違った方法でドロップした場合には、再ドロップできる回数に制限はありません。

また、以下のような本来適切な処置をしなければ状況で処置をせずにプレーを続行してしまった場合には、ペナルティに以下のように違いがあります。

  • 救済エリア内にドロップしたものの、ボールがエリア外に転がった
    →2打罰。ドロップの方法自体は正しいものの、誤所からのプレーとなる。
  • 救済エリア外にドロップしたボールが、救済エリア内に転がって止まった
    →1打罰。救済エリアにボールがあるので誤所からのプレーにはならないが、間違った方法でドロップしたと判断される。誤った高さからドロップしたときも同じ。

ややこしいですが、状況によってペナルティが異なりますので注意しましょう。そもそも、適切な処置をしてペナルティを受けないようにすることが大切です。

関係条項:規則14.3b、14.3c

5.4. 捜索中に誤ってボールを動かした場合には、場所を推定して《無罰でリプレース》

ボールがよからぬ方向に飛んでいってしまい、PAに入っていないかと捜索しに行くこともありますよね。そのようなときに、万が一ボールを蹴るなどして動かしてしまった場合には、無罰でリプレースをします。

動画でチェックしよう

これまでは1打罰で、ボールがあったであろう箇所にドロップしなければなりませんでしたが、このルールが緩和され、無罰でリプレースになりました。もしボールが元々あった正確な場所がわからない場合には、その箇所を推定し、ライなども極力復元した上でリプレースします。これは、元々あった状態よりも良い状態からプレーすることを防ぐためです。

なお、このルールはコース内の全範囲に適用されます。

関係条項:規則7.4、規則14.2c

5.5. 救済時にはいつでもボールを交換可能に

罰の有無にかかわらず、救済時にはいつでもボールを交換可能になりました。

これまでのルールでは、ウォーターハザードやアンプレヤブル、OBなどといった罰ありの救済のときのみボールの交換が認められていましたが、新ルールでは無罰の救済のときであってもボールを交換できます。

動画でチェックしよう

関係条項:規則14.3a

5.6. ジェネラルエリアでは無罰でピッチマークからの救済を受けられる

ジェネラルエリアではどこでも無罰でピッチマーク(自分が打ったボールそのものが作った穴)からの救済を受けられるようになります。

ピッチマーク

番手ごとの距離の把握 |理想のゴルフ

これまでの規則では、「スルーザグリーンの芝草を短く刈ってある区域」、つまりフェアウェイなどの区域でのみ救済を受けられ、ラフは対象外でした。ローカルルールでラフも対象とすることも多かったですが、ゴルフ規則上では正式には決められていませんでした。

しかし、新ルールではジェネラルエリアのどの箇所でも救済を認め、場合によってはローカルルールで救済をフェアウェイだけに限定できるようになりました。つまり、これまでの規則の設定と逆の形です。

また、救済を受ける方法も変わりました。新ルールで救済を受ける場合には、ボールの直後の箇所から1クラブレングス以内のホールに近づかない範囲にドロップします。なお、救済エリアはジェネラルエリアのみです。

関係条項:規則16.3

6. 【グリーン】で注意したい4つの新ルール

第6章ではグリーンで注意したい4つの新しいルールについてご説明します。

グリーンのルール変更を知らないことでペナルティを受ける可能性は小さいですが、今回変更されたルールを知っておくことでプレーをスムーズに、そしてやさしくすることができます。

以下で確認していきましょう。

6.1. 旗竿(ピン)を挿したままパット可能に

新ルールではピンを挿したままパットできるようになりました。

従来はパット時に挿したままになっているピンにボールが当たった場合、ペナルティが課されていました。

しかし新ルールでは、ピンを抜いても抜かなくてもどちらでも問題はなく、もちろんピンにボールが当たってもペナルティが課されることはありません。ピンを抜かないことで、プレーファストの促進が期待されています。

動画でチェックしよう

ただし、打ち上げのコースなどでピンを挿したままにすると、後続組に打ち込まれてしまう可能性もありますよね。こうしたことを防ぐためにも、状況に応じてピンをどうするかを決めるのがよいでしょう。

関係条項:規則13.2a、規則13.2b

6.2. グリーン面の損傷のほとんどを修復可能に

ピッチマーク(ボールマーク)やホールの埋跡以外にも、スパイク跡や動物の足跡などの損傷を修復可能になります。

動画でチェックしよう

従来はピッチマークとホールの埋跡以外の損傷を修復してしまうと「ライの改善」とみなされ、ペナルティが課せられていました。一方新ルールでは、これに加えてスパイク跡などをはじめとしたほとんどの損傷を修復できるようになりました。

ただし、エアレーション跡などのグリーンの状態を管理するための作業による損傷や、自然の力による損傷などは修復できないので注意が必要です。また、修復にあたって不当にプレーを遅らせることも禁止されています。

関係条項:ゴルフ規則13.1c

6.3. パットの線に触れてもOK

グリーン上でのプレーの線(これまでのパットの線)を改善することがない限り、プレーの線に触れても問題ありません。

従来は障害物を取り除く場合など、一部の例外を除いては単にパットの線に触れるだけでもペナルティが課されていました。しかし、単に触れただけではプレーヤーが何かの利益を得られるわけではありませんよね。

そこで新ルールでは、プレーの線を改善しない限りプレーの線に触れられるようになりました。プレーヤー自身やキャディがプレーの線を確認・指示するために手や足、持ち物でグリーンに触れることは問題ありません。

動画でチェックしよう

なお、プレーの線を示すために物を置くことや、ストロークをおこなっている間にプレーの線を示すための行動を行うことは禁止されていますので注意するようにしましょう。

関係条項:規則8.1、規則10.2b

6.4. ボールを誤って動かしても無罰でリプレース

グリーン上で誤ってボールを動かしてしまったとしてもペナルティはなく、元の箇所にリプレースすれば問題ありません。

これは多くのゴルフ場においてローカルルールで定められてきた内容を、ゴルフ規則でも取り入れたものです。

動画でチェックしよう
ボールが自然の力で動いたときには

ボールが風や水などの自然の力で動いた場合の処置は、そのボールが動く前の状況によって異なります。

  • 自然の力で動く前に、すでに拾い上げてリプレースしていたボール
    →元の箇所にリプレース
  • 自然の力で動く前に、まだ拾い上げてリプレースしていないボール
    →「あるがまま」で新しい箇所からプレー

自然の力で動いた可能性がある場合、プレーヤーや物がボールを動かす原因になったのか、それとも自然の力が動かす原因になったのかを決定することは難しいです。その判断を簡単にするために、このような規定がされました。

そのため、リプレース後に動いたボールは何が原因であろうともリプレースすることになります。

関係条項:規則13.1d

7. 【プレーヤーの行動】に関する4つの変更点

第7章ではプレーヤーの行動に関する4つのルールについてご説明します。

新ルールはプレーヤーの誠実さを信頼するというゴルフの原則に立ち返ったものとなりました。規則はプレーヤーが合理的におこなった判断を極力尊重するようになったため、これまで以上に各プレーヤーがゴルフのルール・マナーを理解し、誠実にプレーしていくことが求められます。

7.1. プレーヤーの誠実さに頼るルールへ

先述のとおり、新ルールではこれまで以上にプレーヤーの誠実さが重視されるようになり、さらにそれが規則で明言されるようになりました。

ゴルフ規則の第1章では、プレーヤーがとるべき行動について示されています。

  • 誠実に行動すること
  • 他の人に配慮を示すこと
  • コースをしっかりと保護すること

これに反する行動をおこなった場合のペナルティはありませんが、もし委員会が「重大な非行」をしたと判断した場合、そのプレーヤーを失格にすることができます。

「行動規範」を規定できるように

ゴルフ規則上はプレーヤーが「重大な非行」をしたときに限り、委員会が失格にできると定めています。

しかし、委員会は「行動規範」という独自の基準を設定することで、失格よりも軽い罰打やそのホールの負けなどのペナルティを課すこともできます。

これは失格という重い処分をせずとも、マナーやスポーツマンシップに違反したプレーヤーを処分するために作られた規則です。

関係条項:規則1.2

7.2. ボールを拾い上げる際の告知が不要に

  • 自分のボールかを確認
  • プレーに適したボールかを確認
  • 救済を受けられる状態かを確認

従来、このような場合にはボールを拾い上げる前にその旨を同伴競技者などに告知し、立ち会ってもらわなければなりませんでした。

しかし、新ルールでは他のプレーヤーに告知をしたり、立ち会ってもらう必要はなくなりました。これはプレーヤーの誠実さを信頼するという原則に基づいたものです。さらにこの変更により、プレーファストを促進することが期待されています。

動画でチェックしよう

関係条項:規則4.2、規則7.3、規則16.4

7.3. ビデオ映像よりもプレーヤーの「合理的判断」が支持されるように

プレーのあとからビデオ映像などの証拠でプレーヤーの判断や処置に誤りがあることが明らかになっても、プレー時点でのプレーヤーの「合理的判断」が支持されるようになります。

2017年4月までは、プレーヤーの判断には重きが置かれず、あとからプレーヤーの誤りが明らかになったときにはペナルティを受けることになっていました。しかし、2017年4月以降は新たな裁定によりプレーヤーの合理的判断が支持されるようになり、それが今回新ルールにも反映されました。

ボールをドロップする場所を推定したり、PAの縁を最後に横切った場所を推定したりすることなどは速やかに行わなければならないため、必ずしも正確にできるとは限りません。

そのため、プレーヤーが当時の状況下で十分に合理的な判断ができていたのであればそれが支持され、あとからビデオ映像などの証拠でその決定が間違いであったことが明らかになったとしても、プレーヤーにペナルティはありません。

関係条項:規則1.3b(2)

7.4. 「事実上確実」でない限り、プレーヤーがボールを動かしたとは認められない

ストロークを行う前にボールが動いた場合、ゴルフ規則ではその原因を以下の4つに限定しています。

風や水などの自然の力
②プレーヤー(キャディーを含む)
③マッチプレーの相手(キャディーを含む)
④外的影響(ストロークプレーでの他のプレーヤーやそのボール)

ボールが②~④を原因として動いた可能性があるとき、それが「分かっている、または事実上確実」なときだけボールが動いた原因として扱われます。そうでない限りは、自然の力がボールを動かしたものとみなされます。

動画でチェックしよう

「分かっている、。または事実上確実」という言葉はプレーヤーのボールに起きたことを決定するための基準として使われ、以下の意味合いを持っています。

分かっている、または事実上確実

  • 分かっている:プレーヤー、あるいは他の目撃者が見ていたなどの決定的な証拠がある。100%の事実。
  • 事実上確実:疑念がほんのわずかにあるものの、合理的に入手可能なすべての情報を検討した上で、95%以上の可能性で事実。

この基準はボールが動いた原因を決定するときだけに適用されるのではなく、ボールが動いたかどうかそれ自体を決定するときにも適用されます。

関係条項:規則9.2、規則―定義

8. 頭に入れておくべきその他7つの変更点

最後に第8章では、ここまでではご紹介できなかった7つの変更点についてご説明します。

変更点の多くは、プレーをスムーズに、そして簡単にするためのものです。以下の内容をしっかりと頭に入れて、円滑にラウンドできるようにしましょう。

8.1. 二度打ちをしても無罰に

新ルールでは「二度打ち」をしても無罰になります。

二度打ちとは、1回のストロークでクラブが2回ボールに当たってしまうことをいいます。従来は偶然二度打ちをしてしまったとしても、1打罰が課せられていました。しかし新ルールでは、偶然二度打ちした場合に限り無罰で、1打としてカウントします。

これは二度打ちに限らず、1回のストローク中に複数回クラブがボールに当たってしまった場合にも同様です。

なお、意図的に二度打ちをした場合にはそのストローク数をカウントし、さらに故意に動いているボールの方向を変えたことに対して2打罰を受けます。

関係条項:規則10.1a

8.2. ボールがプレーヤーや用具などに当たっても無罰で「あるがまま」に

ボールが偶然にプレーヤーや他のプレーヤー、キャディー、用具や動物などの外的影響に当たった場合、どのプレーヤーにも罰はなく、あるがままでプレーを続けなければなりません。

従来、ボールが自分自身や自分の用具、キャディーに当たった場合には(自打球)、1打罰を受けなければなりませんでした。一方、他のプレーヤーに当たった場合には双方とも無罰であり、あるがままにプレーするかそのストロークを取り消すかを選択できました。

これを一本化し、前述の新ルールとなりました。なお、グリーン上はこのルールの例外となるので注意しましょう。

ちなみに、ボールの方向を変えるために故意に用具を置いたり、ボールに故意に触れたりした場合には2打罰となります。

関係条項:規則11.1、規則11.2

8.3. 距離測定器が使用可能に

距離測定器が使用可能になります。

従来はゴルフ規則上では禁止されていましたが、委員会がローカルルールで距離測定器の使用を認めることが多かったため、これまでも使用してきたという方も多いでしょう。

新ルールではこれまでの規則の設定とは逆です。規則では距離測定器の使用を認めますが、委員会がその使用を禁止するローカルルールを採用できるようになります。

なお、高低差や風向きなどを計測することは引き続き禁止されていますので、注意するようにしましょう。

関係条項:規則4.3a

8.4. クラブを損傷してもそのまま継続して使用可能に

プレー中にクラブを損傷したとしても、そのクラブをそのまま継続して使用できるようになりました。

従来は「通常のプレー中」での損傷に限り、引き続き使用することが認められていました。しかし、怒ってクラブを叩きつけたなど、通常のプレー中以外でクラブを損傷した場合にはそのクラブの不使用宣言をしなければなりません。残りのラウンドでは使用できませんし、交換することもできませんでした。

しかし、新ルールではたとえ怒ってクラブを壊したとしてもそのまま使用を続けるか、不当にプレーを遅らせない範囲で元の状態に修理することができます。

また、従来は「プレーに適さない」と認められたときのみ他のクラブへの交換が許されていましたが、新ルールではプレーヤーとそのキャディー以外の人、外的影響、自然の力がクラブを損傷させた場合にクラブを交換できます。これにより、「プレーに適さない」かどうかという難しい判断をしなくてもいいようになりました。

関係条項:規則4.1

8.5. スタンス後にキャディーを後方に立たせることを禁止

プレーヤーがストロークのためのスタンスをとりはじめてからストロークを終えるまでの間に、キャディーがプレーの線の後方延長線上に故意に立つことが禁止されます。

従来、キャディーはプレーヤーがストロークを行う前にプレーの線の後方延長線上から離れれば問題ありませんでした。しかし、新ルールではストロークのためにスタンスを取り始めた時点には、プレーの後方延長線上やその付近から離れなければなりません。

動画でチェックしよう

なお、プレーヤーの援助のためではなく、偶然立っていた場合にはペナルティはありませんが、偶然もしくは故意であるかの判断は難しいです。そのため、誤解されることのないよう十分に注意するのがよいでしょう。

2019年2月発表の詳説について

  • 「ストロークのためのスタンスをとり始める」の意味
    →「ストローク」とは実際に行われるストロークのことです。つまり、一度スタンスを解けば、そのスタンスはストロークのためのスタンスにはなりません。そのため、たとえキャディーがプレーヤーの後方に故意に立ったままスタンスをとったとしても、一度スタンスを解き、キャディーが離れたのを確認した後にストロークのためのスタンスを始めれば、ペナルティを受けることはありません。
  • 故意ではなく立つとはどういう状況か
    →「故意」とは、①プレーヤーがストロークのためのスタンスをとり始めていること、②キャディーがプレーの線の後方延長線上やその近くに立っていること、以上の2つをキャディーが気づいていることが要件となります。どちらかに気づいていない場合、キャディーの行動は故意ではないと判断されます。たとえば、キャディーがバンカーを均しており、自身がプレーヤーの後方に位置することに気がついていない場合などが挙げられます。

関係条項:規則10.2b(4)

8.6. グリーン上でキャディーがボールを拾い上げる場合、プレーヤーの承認が不要に

グリーン上でキャディーがボールを拾い上げる場合、プレーヤーの承認は不要になりました。

従来、キャディーはプレーヤー以外の他の人と同じように扱われてきました。その都度プレーヤーの承認を得て、ボールを拾い上げることが求められていました。

新ルールではプレーヤーのキャディーに限って、承認なしでボールを拾い上げられるようになります。なお、グリーン以外にあるボールを承認なしに拾い上げた場合には1打罰となるので注意しましょう。

動画でチェックしよう

関係条項:規則14.1b、規則9.4

8.7. ローカルルールで「前進2打罰」を適用可能に

新ルールからは公式に、ローカルルールとして「前進2打罰」を適用できるようになりました。ローカルルールですので各ゴルフ場によっても異なりますが、基本的には「ゴルフ規則のオフィシャルガイド」内の「ローカルルールひな型」に準じた内容にするのが基本です。

日本国内において、前進2打(前進4打)罰は以前より広く普及していました。やり方には幾分違いがありますが、これが公式なローカルルールとして採用されることになります。

前進2打罰はOB、紛失球(ロストボール)の場合に使われるルールです。このようなとき、ゴルフ規則では暫定球のほか、元の場所に戻ってプレーするストロークと距離の救済をとることが認められています。

これに加えてローカルルールで採用できるのが前進2打罰です。

  • OBの境界線を横切った地点、紛失球の場合であればボールがあると推測される地点から(どちらも「球の基点」)とホールとを直線で結び、その線から外側へ2クラブレングスの範囲
  • 球の基点に最も近く、かつ球の起点よりもホールに近づかないフェアウェイの地点(「フェアウェイの基点」)とホールとを直線で結び、その線から外側へ2クラブレングスの範囲

救済エリアは上の2つの間の場所になります。加えて、ジェネラルエリアであり、球の基点よりもホールに近づいてはならないという制限があります。このローカルルールを使用すれば、2打罰でこのエリア内にドロップすることが可能です。

動画でチェックしよう

この処置法があることで、仮に暫定球を打っていなかったとしても元の位置まで戻る必要はありません。また、ティーショットが不得意で、暫定球でもあらぬ方向に飛んでいってしまう初心者の方などにもこの処置は効果的であり、スロープレーの防止が期待できます。

関係条項:ローカルルールひな型 E-5

9. 「ゴルフ規則」は2種類に

JGAによる公式なゴルフ規則は2種類発刊されています。

  • 「ゴルフ規則書」:ゴルフ規則のフルバージョン。特にレフェリーや運営競技者などが読むべき本。
  • 「ゴルフ規則プレーヤーズ版」:コースで頻繁に使用する規則のみを収録したプレーヤーのための簡略版。コースに出る際には、これを携帯することが求められる。

もちろん「ゴルフ規則書」を全文読み込むことが望ましいですが、まずは「ゴルフ規則プレーヤーズ版」で規則のあらましを確認するのもよいでしょう。

ご自宅では「ゴルフ規則書」を、そしてゴルフ場では「ゴルフ規則プレーヤーズ版」を読むのがベストです。

10. まとめ

この記事では、2019年1月1日から改正された新たなゴルフ規則について解説してきました。

今回は「大改正」といわれるほど多くの点が変更されたため、この記事を読んだだけでも混乱される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、新たなルールはよりスムーズに、よりやさしく簡単にプレーすることの助けになるものです。

新たなルールをしっかりと頭に入れ、基本的な処置などは規則書を読まなくてもできるようになることを目指しましょう。


 
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